介護業界は今後どうなるのか?
介護業界の現状と今後の流れ・サービスのあり方について考察してみましょう。
介護需要は将来も増加し続けることに
2006年12月当時に国立社会保障・人口問題研究所が発表していた「日本の将来推計人口」では、2013年には25%と予想されていましたが、2016年10月時点で日本の65歳以上の人口は、すでに全体の27.3%を超えて超高齢社会に突入しました。
今後2023年には30%超、2055年には40%超まで比率が増加すると想定されています。
健康に支障がない範囲で仕事を継続したりボランティア活動に参加するなど、高齢者であっても社会貢献していくことが、このような超高齢社会では求めらるようになりますが、高齢になるにつれて体力・知力・記憶力などの機能などが減退していくことは否めません。
少子高齢化が進む中、65歳以下の労働力人口は減少の一途で、製造業・サービス業などの全産業で労働力不足に陥っているのが現状ですが、一方、要介護者は年々増加するばかりで将来に渡って介護需要の増加に伴い介護人材のニーズも高まっていくばかりです。
介護分野の人材不足に対応するため、2006年当時から政府は介護保険の大幅改正に着手し予防介護という観点からいろいろな政策を進めてきました。
早めに介護予防サービスを提供することにより、重度の要介護状態まで進行することを減少させていくための様々な方策を打ち出してきまいた。
また、2008年当時には、介護人材を確保し仕事にやりがいを持って取り組める環境を整備していくことを目標にした「社会保障の機能強化のための緊急対策」プランを発表し推進していくとしました。
日本での就労を目指す海外労働者に対して、介護福祉士国家試験に3年後に合格することを受け入れ条件とした海外介護労働者の人材受け入れ事業も2008年からスタートさせてきました。
さらに、社会保障の機能強化のための緊急対策に基づき、2009年の介護報酬改定では3%アップに踏み切り、同年、ハローワークでは介護業界での労働人材を確保するための支援強化を実施しています。
介護福祉士の仕事は高度な技術が今後必要となる
現在に医学の進歩は目覚ましいものがり、重度の要介護状態であっても長年生き続けることが可能となり介護の重度化しています。
また、社会状況の変化により、単に生活できたらそれでよいという考え方ではなく、利用者個人の価値観や生活スタイルを尊重しながら介護していくことが最優先されるようになり、介護ニーズも量と質の両面から確保することが課題となっていて、利用者のニーズは年々多様化しています。
このように介護の重度化や多様化が進む社会状況にあっては、介護福祉士など介護職には知識と技術とも高度な専門スキルと豊富な介護経験を要する人材が求められるようになってきています。
そのことを明確にするために「社会福祉士及び介護福祉士法」の介護福祉士の定義、資格取得方法、養成施設カリキュラム内容などが2007年12月当時大幅改正されています。
従来の介護福祉士の定義では、「介護福祉士とは、食事・排泄・入浴などの介護を専門的知識・技術に基づいて行える者」と謳われていましたが、「利用者の心身の状況に応じた介護を修得した専門的知識・技術に基づいて行える者」という定義に変更されています。
これは、心のケアを要する認知症高齢者に対しても適切に対応することが要求され身体介護だけがサービス対象ではないことが伺えます。
資格取得方法についても、以前は養成施設修了又は介護職の実務経験があれば国家試験合格で介護福祉士資格を取得できました。
今は、養成施設を修了しても国家試験合格が介護福祉士の取得条件になり、養成施設のカリキュラム内容も履修時間数がアップし、介護の実務に対応できる授業内容になっています。
3年の実務経験者が受験する場合は、実務者研修の受講修了も義務付けられ、その後国家試験に合格してやっと資格取得できるという受験システムになっています。
資格取得後もスキルアップが必要に
介護の重度化・多様化対応するためには、資格取得後も知識や技能を向上させ続けていけるような教育システムが必要になってきます。
このような介護分野の情勢を考慮し、日本介護福祉士会では生涯研修制度が作成され2007年から運用がスタートしています。
現在では、認知症高齢者に対応できる専門知識・技能を習得している専門介護福祉士の研修が実施されていますし、高度な介護知識・技術を習得し介護現場でリーダーシップをとれる介護福祉士の上位の資格として、認定介護福祉士制度が具体的に検討されています。
今後は、教育制度の整備や待遇改善により、さらなるレベルアップを目指す方も増えていくかもしれません。
小規模化・地域密着型の介護サービス形態へ移行
特別養護老人ホームなどの施設入所が高齢者介護の中心的な施策であったというのが、介護保険制度が施行される前の実状です。
しかし、利用者の視点に立つと集団生活を余儀なくされる施設での生活が最善な状態であるとは言い切れません。
集団生活では利用者の習慣・嗜好を考慮し各自に合った食事献立や生活日程などに基づいたサービス提供は困難で、どうしても画一的なサービスになりがちです。
また、大勢の入居者を受け入れることができる規模の大きい介護施設などは、土地の値段が安い郊外に開設されることも多く、長年住み慣れた地域から利用者は離れて入居することになり、そうなると近隣の知人友人や家族と気兼ねなく交流する機会もなくなってしまします。
なので、よほどの重度要介護者でない限り、訪問介護サービスを利用して住み慣れた自宅で生活できるのが理想ですし、自宅で在宅介護を受けることが難かしくなった方であっても、自宅近くで生活できるグループホームなどがあれば地域社会とも関わりつつ従来通りの暮らしができるので、地域と密着した介護サービスが求められるようになっています。
以前は都道府県が介護保険事業者を指定していましたが、2006年の介護保険制度改正では、入居定員が29人以下の地域密着型小規模サービスの利用が開始され、指定や指導監督は市町村が担うことになりました。
また、その介護サービスについても事業者指定を行った市町村に在住する地域住民のみ利用可能です。
主に地域密着型小規模サービスの形態には次のようなものがあります。
- 定員29人以下の小規模特別養護老人ホーム
- 小規模多機能型居宅介護
- 夜間対応型訪問介護
以上のような社会環境の変化に伴い、介護サービスの今後は、小規模化及び地域密着型の傾向が大きくなり、サービスも全体的にもこのような方向に流れていくことが想定できます。
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