医療的ケアの研修が導入された時代背景について

在宅医療ケアによる家族負担と軽減策

 自宅で医療ケアを実施する場合、以前は家族しか行う者がおらず、その負担は大きなものでした。

利用者の病状によっては、1日に何回も頻繁にケアを行う必要があり、会社を辞めざるを得ない人や体調を崩して健康を害する人も多く、経済的にも困窮し社会的にも問題となりました。

医療的ケアの研修制度が導入されることになったきっかけ

 自宅での医療ケアの中でも、特に、ALS=筋萎縮性側索硬化症の患者が家庭にいる家族は、大きく介護負担がのしかかり、心身共に疲弊する方も多くいました。

ALSとは、全身の筋肉が萎縮して身体機能に障害が現れ、次のような行為を自由に自分で行うことができなくなります。

  • 手を動かしたり歩いたりできない
  • 話すことができない
  • 食物を飲み込まない
  • 咳ができないので痰を排出できない

 ALS患者の場合、痰が滞留していても自分で吐き出すことができないので、家族が助けるしか方法がなく、吸引器を使用して痰吸引を行いますが、夜間に平均3〜4回、多い時には10回以上も痰吸引をすることがありました。

この状況になると、当然家族は不規則な睡眠で寝不足になり、体調不良を起こします。

さらに、水分や栄養を補給するため胃ろうや腸ろうによる経管栄養を、チューブから最低限1日に3回は補給する必要があるので、会社で働くことも難しくなり経済的にも困窮することになりかねませんでした。

日本ALS協会からの働きかけ

 このような苦しい状況を打開するために、平成14年(2002年)に日本ALS協会が、「介護職員等に医師の指導を受けてもらい、日常生活でALS患者など吸引が必要な方に痰吸引を行えるようにしてほしい」という旨を国に嘆願し、国が検討に入りました。

因みに、日本ALS協会とは、ALS患者やその家族で構成されている団体です。

 その後、日本ALS協会の要望を受け国が「実質的違法性阻却論」に基づき、本来は認められないが、安全に配慮すれば喀痰吸引や経管栄養を介護職員などが行うことについて、大目に見てよいと認める意思を示しました。

そうは言っても、法的には違法状態なので、事故発生時の対処や賠償問題の不安などもあり、すぐには制度整備が行われることには繋がりませんでした。

しかし、日本では少子高齢化がますます進み、家族だけで在宅ケアを担うことは困難となり、家族ケアの負担を軽減し、家族の代わりに介護を担う人材の育成や充当について、日本社会全体の重要課題として取り上げられるようになりました。

 以上のような時代的背景から介護人材を育成し、家族負担を軽減するための解決策として、国は社会福祉士及び介護福祉士法を改正し、本来医療行為である喀痰吸引や経管栄養を介護福祉士が行えるよう研修制度を設け法制化されることになりました。

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