介護施設などの利用者で、食事をして自力で口から栄養を摂取できなくなった場合、次の2通りの方法で栄養を補給することになります。
- 経静脈栄養法…輸液を血管に送り栄養を補給する方法
- 経管栄養法…流動性の栄養物を消化管に直接送り栄養を補給する方法
ここでは、経管栄養法について解説していきます。
経管栄養とは、食事で口から栄養を摂取できなくなった場合、又は不十分な場合に栄養剤(流動食)を消化管内に挿入したチューブから注入し、栄養状態を改善したり、維持できるようにするための補給方法です。
静脈から点滴などで栄養を摂る経静脈栄養法と比較しても、消化管に直接栄養を投与できるので自然で安全性にも優れ、医療費も安く抑えることができるなどの特徴があります。
経管栄養が必要となる疾患や病状
経管栄養が必要となる疾患や病状には次のようなものがあります。
- 嚥下障害がある場合
- 食事をしても誤嚥性肺炎を繰り返す場合
- 食事をしても栄養補給の状熊が良くない場合
- 食道や口腔を手術し、食事ができない場合
- 炎症性の腸疾患がある場合
経管栄養の種類と特徴
栄養剤を注入するチューブの挿入経路から、経管栄養の種類は、次の3つに分類できます。
- 経鼻経管栄養
- 胃ろう経管栄養
- 腸ろう経管栄養
胃ろう又は腸ろうによる経管栄養
胃や腸に内視鏡手術により孔(穴)を開け、そこから栄養剤を直接注入する方法です。
処置期間
6週間以上に渡り、長期的に食事を□から摂れない状況が続くと考えられる場合に用いられます。
メリット
- 体内にあるチューブが短く抜けにくいので安全である。
- 外見上も見栄えがよい。
- 経管栄養を行っている最中でも、胃や腸に繋がっているチューブから栄養を送るので、同時に□で食べる訓練やリハビリを行うこともできる。
デメリット
- 穴を開ける際に手術を行う必要がある。
- 穴の周りの皮膚トラブルや腹膜炎などを発症しやすい。
経鼻経管栄養
鼻腔から胃の中までチューブを挿入して栄養剤を注入し補給する方法です。
処置期間
数週間程度、一時的に食事を□から摂れない状況が発生した場合に用いられます。
メリット
- 比較的簡単にチューブを挿入できる。
デメリット
- 経管栄養に使用するチューブが細いので栄養剤が詰まることも多い。
- 鼻にチューブが挿入されており違和感や重篤感を感じる。
- 経鼻経管栄養中は食事を口から摂る訓練などができない。
経管栄養を行うために必要な主物品
- イルリガートル(栄養ボトル)
- カテーテルチップ型シリンジ
- イルリガートルとカテーテルの連結チューブ
- ガートル台・イルリガートル棒(注入用栄養剤吊り下げ用スタンド)
- 栄養チューブ
- 栄養剤
- 使い捨て手袋
- 洗面器
- 微温湯
- 清浄綿
- はさみ
- タオル
- ティッシュペーパー
- 吸引器
- 体温計
- 血圧計 など
経管栄養を行う前の確認事項
経管栄養を行う前に次の項目をチェクし、該当するものがあれば栄養剤の注入を中止し医師や看護師に報告し指示を仰ぎましょう。
自分勝手に判断してはいけません。
- チューブの割れ・ヒビ・キズがあったり、抜けかけたりしている
- 孔からの出血などが見受けられる
- 利用者の体温が正常値より高い
- 下痢・腹痛・吐き気などの症状がみられる
- 血便・吐血などがみられる
- 顔色や気分が悪い
- 血圧が正常値よりかなり低くなっている
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