ケアマネジメントの管理サイクル
サービス提供責任者の立場にある介護職員実務者研修や介護福祉士レベルの介護職員が、業務を円滑に進めて行くには、ケアマネジメントにおける管理サイクルのポイントや進め方を理解しておくことが重要です。
ここでは、介護マネジメントのPDCA管理サイクルのポイントや進め方について一般の介護職員にも分かりやすいように旅行・遊びを例題にして解説していきます。
計画(Plan)を立てる際のポイント
まず、第一段階として、マネジメントの基本である計画をしっかりと立てることから出発します。
旅行を充実した楽しいものにするには、費用と時間が限られている中で、事前に行き場所、遊び方や過ごし方について入念に計画を練っておく必要があり、そのための様々な情報をあらかじめ収集しておかなければなりません。
また、旅行先で時間をどのように活用し、一番の目的は何かをイメージしておくことも大切です。
収集できる現時点での情報と、希望する旅行の行き場所や過ごし方をもとにして、旅行をする時点を事前に予測して計画を立てることからマネジメントが始まります。
旅行のイメージも計画を立てている中で、徐々に広がっていくものです。
そして楽しく旅行するには、費用と時間が限られている中で、最も費用対効果が見込めるようにするには、どうしたらいいかという考えが浮かんできます。
計画を立てる段階では、絶対この場所に旅行して○〇をするといった決意も大切ですが、万が一、予期せぬことが起こり、その場所に旅行できなかった場合はどうするか、という代わりのプランも考えておくことが大事です。
計画は、一辺倒ではなく、目的を達成するために柔軟にアプローチしていけるだけの余裕を持たせたものにすることが重要です。
また、費用やスケジュールについては目標値を数値化しておき、計画が決まったらそれに基づきホテルの予約やチケット・切符の購入などの準備を行うことが必要になります。
実行(Do)する際のポイント
次に、第一段階として、計画を立てたら予定に従って旅行に出発し実行に移します。
一人旅でなく、集団で旅行する場合は、全体の行動を適切にコントロールできるよう数人づつのグループに分担して世話役のリーダーをそれぞれ置くなど、会社内で言うところの組織化も必要になってきます。
また、旅行中には、次のような出来事が起こる場合も考えられ、これらに対しても臨機応変に対応しながら、最初に計画した内容を都度修正しながらも、最高の楽しい旅を送るという旅行の最終目的を達成できるように全体を調整していくことが必要になります。
- 飛行機や電車など交通機関の遅れやトラブル
- 思いがけないメンバーの体調不良
- 刻々と変化する目的地の状況や事情
旅行会社のツアーに参加した場合、ツアーコンダクターが参加者のお世話や案内をしてくれますが、よく観察していると、次のような様々な業務をあらゆる状況の中でも日程計画で予定されている通りに的確に対応している事がわかります。
- ツアー参加者の点呼・集合
- 観光地の紹介・案内
- 宿泊先の部屋割り
- 変化する交通事情の対応
- 参加者からの苦情対応
以上のように、実行とは当初の目標を達成できるように計画に従い、実際の物事や状況を見極めながら采配し進めていくことを言います。
評価(Check)し、改善処置(Act)する際のポイント
最後の第三段階は、実行したことに対して評価し、次の計画にフィードバックし活かせるようにすることです。
家に帰宅してから全員で集まり反省会など行う人は旅行の場合は、ほとんでないと思いますが、旅行に行った人達は、「今回の旅行は楽しかった。」又は「楽しくなかった」などと感じているのが普通で、その結果は、次回の旅行時の過ごし方を考える参考材料になります。
楽しくなければ、なぜ楽しくなかったのかについて考え、次回旅行時には同じことをしないように注意するなど、活かすことが出来ます。
このような考え方が、最終段階である評価や改善処置というプロセスになります。
実際、旅行会社が企画するツアーでも、最後に「旅行の感想を聞かせて下さい。」と言ってアンケートなどを取ったりしています。
これは、参加者がこのツアーに対して、良かったか、悪かったか、どう感じたか、などを把握して次回のツアー企画をより良くするために反映させていくためですが、ごく当たり前のことだと思います。
実施したことをしっかり評価することによって、次回からさらに質の高い価値ある企画や計画を立案することが出来ます。
ケアマネジメントの目的は次回介護サービスをよりよいものにするため
一般企業の最重要テーマは、顧客満足(CS=カスタマーサティスファクション)を、いかに向上させるかに尽きます。
顧客満足を向上させるための測定手段としてマネジメントの管理サイクルを回し、計画と結果の差異を測定把握して評価し、次回の計画立案時に反映してより良いものにできるように活用していきます。
このように、マネジメントのPDCAの管理プロセスの考え方は、介護での訪問介護計画も、一般企業の経営計画も原則全く同様の考え方で管理することができます。
要介護が必要な高齢者をどう介護していくかという事と、数万人の従業員が在籍する大企業がどのように事業経営を進めていくかに関して、業務や管理の進め方には原則大きな違いはありません。
以上のことから、サービス提供責任者の仕事を任されている実務者研修修了者や介護福祉士の方は、ケアマネジメントという考え方や手順・やり方をしっかり理解しておくことが必要です。
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