介護福祉士の有資格者が行う主な業務には、「身体介護」「生活援助」「相談・助言・指導」の3種類の仕事があります。
特に「身体介護」については、高齢者や障害者などに対して介護施設や在宅訪問等で行われ、「直接生活介護」「健康観察」「健康管理」といった3つの観点から介護を実施していきます。
直接生活介護の主な業務
日常生活において食事、排せつ、入浴、衣服着脱、移動、移乗などの介助を、高齢者・障害者などの身体に直接触れて実施する介助のことを直接生活介護(直接支援)と呼びます。
通常、介護職と聞くと、ほとんどの方が高齢者などのお世話を行う仕事だと認識していると思います。
食事介助について
食事介助は次の6つの項目の中で、自力で出来ない行為が一つでもある場合には必要となります。
- 姿勢を保って食卓まで移動する
- 出された料理を見て何かを認識できる
- 食器・箸・スプーンなどを自力で持てる
- 口に食物を選んで運べる
- 咀嚼できる
- 嚥下できる
食事をする場合は、ベッド上ではなく、別の場所で座って食べてもらうようにすることが大切です。
また、食事が終了すれば口の中を清潔に保つために利用者の口腔ケア介助を介護職員が実施します。
誤嚥予防の注意点
- 食事を意識がはっきりしているときに摂取する。
- ゼリー状やとろみを付けて、食事はのどを通りやすくする。
- 少量ずつ食べ物を口に入れる。
- 食べ物を飲み込みやすくするために、少し前かがみで顎を下げ気味にして食事を摂る。
- 誤嚥する危険性があると判断した場合は、食事は直ちに中止する。
排泄介助について
「排尿」や「排便」により体外に不用なものが排出されることを排泄と言います。
腎臓では、人の体内にある老廃物が血液に乗って運搬され集められた後、濾過され尿となって排出されますが、尿は膀胱に一旦溜められて250〜300mlまで溜まると尿意をもよおし尿道から排泄されます。
食物を食べると栄養分として胃や小腸で吸収されますが、その残りが大腸で便となって肛門より排便されます。
高齢者や障害者が行える排泄行為の自立レベルに合わせて排泄介助を実施しますが、原則はオムツ介助にならないように行うことが基本です。
トイレ介助を行う際の注意点
- 排泄をせかさないことが一番の重要ポイントです。
- ズボンや下着を1人でおろせない場合は、壁に寄りかからせて後ろからおろすか、介護者に寄りかからせておろすようにします。
- 便座に1人で座れない場合は、便座の中央に抱きかかえるようにして座らせます。
- 排泄する時はゆっくりと利用者1人で行い、本人に呼ばれてから介護職員が入り、排便などの拭き取りが自力では困難な場合に介助を行います。
入浴介助について
浴槽に入るときと出るときが入浴介助の主になり、後は利用者本人のペースで、ゆったりと入浴してもらいます。
食前食後の1時間内は入浴を避けて、排便・排尿・バイタルチェックなどを入浴前にすませます。
浴槽内の湯温は40℃前後、脱衣室の室温は22〜25℃に設定し、入浴時間は10〜15分を目安にします。
また浴室内に滑り止めマットなどを用意し、安全に入浴できる環境を確保をします。
利用者が体調不良などで入浴できない場合は、全身を清拭し清潔を保てるようにします。
健康観察の主な業務
介護職員が食事、排泄、入浴などの介助をする際に、利用者の身体などに異変がないかを確認する行為を健康観察といいます。
もし異変を発見したら、迅速に医師などの医療スタッフに連絡し状況を報告します。
排泄介助でのチェックポイント
身体の異常がすぐに発見できるのが、便秘、便失禁、下痢、失禁、排尿障害などの便や尿に関してチェックを行っている時で重要なポイントになります。
特に便秘は高齢者の身体にはよくないなので、毎日チェックを行い長期間の便秘でなくても注意が必要です。
食事介助でのチェックポント
食べ方から利用者の健康状態がわかることも少なくなく、食欲があるときは健康な状態といえます。
チェックする時は、「食欲」「摂食量」「摂食動作」「咀嚼状態」「嚥下機能」「口腔内・歯の状態」などを観察します。
食べることが好きで食べ物にこだわっていた人が急に関心を失くした場合などは注意が必要です。
入浴介助でのチェックポイント
皮膚病などのチェックは、全身の状態を入浴時に観察できるのでしっかり行いましょう。
寝たきり状態の利用者は、特に褥瘡(じょくそう)のチェックが重要ポイントです。
健康管理の主な業務
担当している職場の介護職や専門職と情報共有できるように、バイタルサイン(脈拍や体温)などを測定したらきちんと記録しておくようにします。
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