介護現場に於けるお金のマネジメントポイント
お金はどんな分野や業種であっても会社や事業体にとって、人の体で例えると全身を駆け巡っている血液と同じような役割を果たしているものといえます。
実際に人の体も血液の流れが悪くなれば、身体のあらゆる部分に健康被害が発生し、最悪の場合は死に至ることもあり得ます。
それと同じ様に、介護事業者においても、介護サービス事業をめぐる血液=資金の流れが滞れば、サービス提供のために必要な設備投資や物品購入などに支障をきたし、職員の給料も支払えなくなり、適切な介護サービスを利用者に提供することができなくなってしまいます。
資金の流れが滞るということは、最終的に顧客=利用者に多大な迷惑と損害を与えることになり、すなわち事業経営にも悪影響が及び、倒産ということにも繋がっていきます。
介護職員実務者研修資格取得者やサービス提供責任者など管理的な立場に就いている方は、介護スタッフの業務管理だけでなく、毎月の経営状況についても意識することが大切です。
例えば、自分が従事している事業所や施設の人件費などの固定費や物品購入などにかかる変動費などの資金の流れ、月々の収入・支出・利益などの収支状況についても理解し、普段から数値を念頭において、どうすれば効率的なお金の使い方ができるかなどについて、関心と注意を払わなければいけません。
訪問介護サービスなどの事業収入は、利用者負担費用の1割と介護保険報酬費用の9割で成り立っており、報酬単価は介護保険法で規定されています。
よって、サービス利用者の要介護度と利用人数によって、事業収入が変化し経営状況の良し悪しに影響してきます。
また、事業支出の費用については、介護職員の人件費、設備賃貸料、家賃、介護用物品、事務用品、水道光熱費、通信料、訪問介護サービスの移動手段となる車やバイクの維持費やガソリン代、自転車購入費など、多くの支出項目が挙げられます。
介護サービス事業の収入をアップさせる方策としては、要介護度の高い利用者を多く抱えほど、より単価の高い介護報酬を得られますが、それだけ手がかかることになり介護職員も増員することになるので、人件費も増加していくことになります。
また、訪問介護サービス事業において訪問効率を向上させるためには、できる限りサービスセンターから近くて狭い範囲に多くの利用者を集中して確保するのが最善策です。
但し、都市部では可能であっても山間部や地方では簡単にできることではありません。
当然、営業区域内には他の事業者も参入しているので競合することになり、どのように差別化し収益を確保していくかという戦略も考慮に入れなければ生き残っていけません。
介護サービスの事業経営が安定するかどうかは、事業戦略として収入と支出、費用対効果のバランスをどう図っていくかを考え、資金(お金)のマネジメントをいかに上手くバランスよく行なえるかに尽きます。
介護サービスの事業経営のしくみ
事業収入=利用者の要介護度と利用人数- 1割:利用者負担額
- 9割:介護保険からの報酬額
- 介護職員(ホームへルパー)の人件費
- 訪問コスト(交通費・車両費)
- 設備レンタル料・家賃
- 水道光熱費・通信費 など
介護現場における情報・サービスのマネジメントポイント
サービス提供責任者の中心となる仕事内容は、次のような介護サービスそのものについて全体的な統括管理を行い円滑に業務を遂行するためにコントロールすることです。
- ケアマネジャーが策定したケアプラン(居宅サービス計画)に沿って、訪問介護計画を作成する。
- 利用者にサービス内容を説明し、契約を結ぶ。
- 訪問介護計画に従って具体的に介護サービスを提供し、実施状況や実績の評価を一定期間毎に実施し確認する。
訪問介護計画を立案・作成する場合は、利用者の生活目標を定め、その目標を実現させるための援助計画をケアマネジャーから事前収集した情報を基にして具体的な内容に落とし込んで、利用者からその内容でいいかどうか納得し了解を得る必要があります。
また、カンファレンスを開催し、利用者・家族と、ケアマネジャー・介護ヘルパー・関連するサービス提供事業者などが適宜集まり、訪問介護計画のサービス内容の妥当性を評価し、見直す必要があるかどうかなどを検討して必要な場合は改善していかなければなりません。
介護サービスの情報、介護サービス内容そのものについても、Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Act(改善)の4ステップでトータル的に業務を継続的に繰り返して改善しマネジメントしていくことが、介護サービスの質の向上につなげていく重要な鍵となります。
訪問介護計画の様式は特別に規定されているわけではありませんが、きめ細かなサービスを行うために、利用者の居宅間取り図を作成し、各部屋の家具や備品の置き場所、生活習慣や周辺環境を細かく記載した資料を作成しサービスを行う際に有効活用している事業所もあります。
このような資料は患者の医療カルテと同じような意味合いがあり、介護スタッフが変更になっても一定の質を保ちながら継続してサービス提供を行えます。
介護事業者にとってもサービスの質を担保する元となる重要な情報になり、貴重な企業財産になります。
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