介護現場で使用されている介護設備や各種用具など、介護サービスを行う上で必要な設備・物品類を常に最新・最適な状態を保持して提供し、利用者がいつでも満足できるようサービスの質を向上させる努力を行うことは介護サービスの事業運営においては重要な要素になります。
顧客に提供する商品には「サービス」と「モノ」がありますが、サービスはモノと比較しても、次のような特徴を有しています。
商品 | サービス(介護) | モノ(家電) |
形 | 無形 サービスは、目に見えるような形では提供されない。 |
有形 物品は、全て目に見える形で提供される。 |
在庫 | 非貯蔵性 サービスは、事前に生産して在庫などで貯めておくことはできない。 |
貯蔵性 物品は、事前に部品や完成品として在庫を持ち貯めておくことが可能。 |
現状復帰 | 非可逆性 一旦提供が完了したサービスは、元の状態に復帰することはできない。 |
可逆性 物品は、購入した後、返品や修理をして、元の状態に復帰することが可能。 |
生産と消費の同時性 | 同時性 サービスは、提供する者と提供される者が、その場所や時間に同時に居なければサービス提供を行えない。 |
非同時性 物品は、生産したのち後に顧客が使用するので、生産と消費の同時性はない。 |
以上のように、介護サービスなどの場合は利用者が介護を希望した時点で、その場で直接人に対してサービス提供を行わなければいけないので物品製造とは大きく異なり、提供と同時に相手に合わして細かい所まで配慮が必要になるという特性があります。
なので、いくら教育やマニュアルを充実させても、現場で行われている介護サービス自体を100%直接管理したりマネジメントしたりすることはできません。
ですが、介護サービスを提供するのに必要な施設・設備・用具・備品などを適切に管理しておくことで、間接的にサービス内容や質を充実させ利用者満足度を向上させるようにコントロールすることは可能です。
このような観点から物理的環境やモノをしっかりマネジメントすることは重要になります。
最近の有料老人ホームの中には、一見ホテルかと思うような豪華な設計で建設されている高齢者施設もあり販売されているケースも少なくありませんが、使いやすく清潔な室内環境にすることで、わざわざ新しく建設しなくても十分快適に利用者が使用できるようにすることも可能です。
物のマネジメントというと、建屋や室内・廊下・食堂・浴室・トイレなどのバリアフリーなど、改築・改修したりすることだけがクローズアップされますが、清掃が行き届き清潔な環境になるように心がけるのも重要なマネジメントの要素になります。
また、福祉用具や日用品などについても高齢者や利用者の身体機能の程度に応じて、日頃の生活をしっかり支えていくために適宜適切なものを準備して有効に利用できるようにしておくことも大切です。
オムツや食べ物など利用者が身近で使用するものは、在庫量・品質・使いやすさについても最適な状態を維持できるようにコントロールしていくことが重要です。
訪問介護における物のマネジメントの範囲は、介護施設の設立場所や運営に必要な設備や福祉用具、備品、移動手段である乗り物、訪問介護先で必要になる日用物品など多くの物が対象になります。
介護施設以外で使用されるものは、多くが利用者所有になりますが、買い物をする場合は財布やお金が必要になり、振り込む場合は預金通帳や印鑑、掃除する際は掃除機やほうきや雑巾などが必要になるので、これらをすぐ取り出せるように置き場所を決め、介護記録や連絡ボードも設置し運用できるように居住環境を整備することも介護マネジメントの対象になります。
このようなことを適切に行うことで、介護訪問先での提供サービスのクオリティも大きく異なってきます。
また、簡易トイレや車椅子、入浴補助具、食事補助具などの福祉用具の適切な使用方法、手すりやバリアフリーなどの居住環境の改修などについても適切な助言を行えるだけの基本知識を身に付けておくことが重要です。
実際に今までは排泄介助を行っていた利用者が、段差解消や手すり設置などの改良を行ったことで、介助者なしで便所まで一人で歩くことが可能になり、手すりを付けただけであっても、利用者の利便性が大きく向上し生活も様変わりするケースもあります。
結局、モノのマネジメントやコントロールという本当の意味は、ハード的な側面だけでなく物に備わった特性を最大限有効活用し、介護サービスを受けている利用者にとって最適な使い方ができるようにマネジメントできるかが最大のポイントになります。