介護保険法の関連施設である認知症高齢者グループホームのサービス対象者・内容・提供事業者、小規模・多機能型サービスの導入と利点、痴呆から認知症へと名称変更された理由などについて解説しています。
介護保険法関連施設(認知症高齢者グループホーム)のサービス内容
認知症高齢者のケアを重視した居宅サービスのひとつが認知症高齢者グループホームサービスというもので、認知症高齢者の支援を行う具体的な施策としてスタートしました。
この認知症高齢者グループホームの事業運営に関する費用補助がスタートしたのは1997年になってからです。翌年の1998年度には社会福祉法人などが実施していた施設整備に関する費用補助が始まり、2000年から施行された介護保険制度では、居宅サービスの一環として認知症対応型共同生活介護が位置づけられることになりました。
認知症高齢者グループホームのサービス対象者
中レベルの認知症状態にあり、要介護認定を受けている高齢者が入居対象で、重い精神疾患を抱える高齢者はサービス利用することはできません。
認知症高齢者グループホームのサービス内容
一般の空き住宅や施設を転用しながら市町村が指定した事業者が事業運営しサービス提供を行います。
認知症高齢者グループホームでは、介護職員と共に地域に在住する中度認知症高齢者5~9人が1つのユニット単位で集まり、家庭での生活と同じような環境で共同生活を行います。
一見すると入所施設と似か寄った形態ですが、介護保険上は居宅サービスの一つになります。
介護スタッフは、日常生活上で必要な身の回りの世話、入浴・排泄・食事などの介助、機能訓練などの各種サービスを行います。
但し、介護職員が利用者へ一歩的にサービスを行うだけでなく、自立して日常生活を営むことができるよう、認知症高齢者の身体機能の残存能力に見合った家事を分担して行ってもらいます。
部屋や庭の掃除、施設内の整理整頓、食事づくりや片付けなど、入居者の能力に応じ自分でできる範囲で家事や行事などに参加してもらいます。
少人数でグループになり日常生活を送りながら介護を受けることで、認知症であっても心に安心感を持って暮らせるようになり、入居者一人ひとりが持っている能力に見合った、自立した日常生活を送れるようにすることを基本目的としています。
認知症患者の一般的な諸症状
諸症状 | 発症内容・問題行動 |
日常生活動作の障害 |
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問題行動 |
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基本的症状 |
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精神症状 |
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神経症状 |
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サービス提供事業者
地域密着型サービスを推進していくのが介護保険制度改正の大きな狙いです。
従来、認知症高齢者グループホームは、都道府県が指定した法人が事業運営できる事になっていました。
ですが、高齢者が長年暮らし慣れ親しんだ地域社会と関わり、近隣住民とのつながりを持ちながら生活できることに重点を置いた介護を行うべきだという考え方から、現在は市町村がグループホームなどの地域密着型サービスの事業者を指定したり、管理監督する権限が与えられています。
指定事業者の形態には、社会福祉法人、NPO法人、医療法人、民間株式会社などがあります。
小規模・多機能型サービスの導入と利点
2006年度の介護保険制度の改正では、小規模・多機能型サービスが新規に導入されましたが、これは従来の「在宅」と「施設」という二重形態のサービス内容を改善するのが目的でした。
サービス機能という観点で分類することにより、利用者の目線や立場に立って「通所」「宿泊」「訪問」「入居」などのサービス機能を総合的に組み合わせ、小規模であっても、利用者の心身状態の変化に合わせて、トータル的に継続したサービスを提供できるという点が小規模・多機能型サービスの大きなメリットです。
認知症高齢者グループホームでは「入居」と「通所」という両機能を持ったサービス形態へ、規模の小さい通所サービスでは「通所」と「宿泊」という両機能を持ってサービス形態へ移行することで、利用者の利便性を向上させることができます。
痴呆から認知症へと名称変更された理由
以前は認知症のことを痴呆という名称で呼んでいましたが、軽蔑感を助長し不愉快な感情を誘発するということで議論にあがっていました。
そこで、厚生労働省が名称に関する意見募集を行い、その結果、「認知障害」と「認知症」が候補の上位に挙がっていましたが、認知障害は既に使用されているという事情から最終的に現在使用されている認知症という名称に改正されたという経緯があります。