介護保険制度で禁止されている身体拘束ですが、以前から現在に至っても実際の介護現場では問題が発生しており、悲惨な事件に繋がりニュースなどで取り上げられることも珍しくありません。
いかなる状況にあっても、職業として介護に携わる者としては絶対に行ってはいけない行為です。
身体拘束の廃止と現状
身体拘束を廃止し、身体拘束を無くすということになっていても、実際の現場では相も変わらずこの問題が発生しているのが現状です。
社会において一人の人間として暮らしている高齢者や障害者の生活を完全に無視して奪いとることになるのが身体拘束という卑劣な行為です。
身体拘束を行う者の言い訳に、緊急性、代替手段無し、一時的など緊急時で他に手段がないケースだったから仕方なくやっているということもあるようですが、実際は必ずそうとは言い切れない場合も多いようです。
その部分だけを切り取って見れば、緊急事態であったかもしれませんが、問題が起こる要因は以前から潜在的にあり、真の原因に対して解消できるように対応していなかったことが、現在の問題につながっているケースが少なくありません。
また外的な身体拘束以外に、利用者を無視したり威圧したりするのも、精神的に追い詰めることになる問題行為で言葉の拘束ともいいます。
身体拘束を撲滅するには
厚生労働省では、身体拘束という行為を伴わない健全な介護を行う方法を三つの原則として公表しています。
利用者の問題行動の真の誘発要因を追求し解消できるようにする
利用者が問題行動を起こすのは、大元の誘発要因があるので、表面的・一時的な身体拘束は絶対行うべきではありません。
問題行動を無くすためには、その根本的な原因を追求・アプローチし明らかにして、具体的に解消・改善できるようにすべきです。
まず基本的介護の徹底を図る
日常生活の要である食事・排泄・入浴・整容・移動・移乗などの基本的介護に対する不満により生活リズムが乱れ、それが起因して利用者が問題行動を起こす原因の一つになっていることもあり得ます。
なので、まず利用者の心身状況に見合った適切な基本的介護を徹底して行うことが重要です。
拘束廃止を起点にして課題提起し、身体拘束撲滅を実現する!
安易に身体拘束という手段に訴えるのではなく、完全に廃止するという前提で、何をすれば最善なのかということを課題提起し、利用者の尊厳と自立心を保てるような介護サービスを提供できるように日々努力し改善することが求められます。
具体的な身体拘束の行為とは
下記に示す行為が身体拘束の具体的な行為になりますので、介護事業者はもちろんのこと、介護職員の方は、再度認識し絶対に行わないように互いに厳重に注意し合うことも重要です。
- 徘徊しないように、車いすやいす、ベッドに体幹や四肢をひも等で縛る。
- 転落しないように、ベッドに体幹や四肢をひも等で縛る。
- 自分で降りられないように、ベッドを柵(サイドレール)で囲む。
- 点滴、経管栄養等のチューブを抜かないように、四肢をひも等で縛る。
- 点滴、経管栄養等のチューブを抜かないように、または皮膚をかきむしらないように、手指の機能を制限するミトン型の手袋等をつける。
- 車いすやいすからずり落ちたり、立ち上がったりしないように、Y字型拘束帯や腰ベルト、車いすテーブルをつける。
- 立ち上がる能力のある人の立ち上がりを妨げるようないすを使用する。
- 脱衣やおむつはずしを制限するために、介護衣(つなぎ服)を着せる。
- 他人への迷惑行為を防ぐために、ベッドなどに体幹や四肢をひも等で縛る。
- 行動を落着かせるために、向精神薬を過剰に服用させる。
- 自分の意志で開けることのできない居室等に隔離する。
厚生労働省「身体拘束ゼロの手引き(PDF)」より