実務者研修の受講を検討している方で、
「ハローワークの制度を使って実務者研修を無料受講できるのだろうか?」
と考えている方はいませんか?
答えを先に言ってしまうと、実務者研修を無料受講し、資格取得できる次の3つの制度がハローワークでは提供されています。
- 公共職業訓練
(雇用保険を受給できる離職者向けの職業訓練) - 求職者支援制度
(雇用保険を受給できない求職者向けの職業訓練) - 介護労働講習
(雇用保険を受給できる介護求職者向けの職業訓練。介護労働安定センター主催の介護に特化した職業訓練)
このページでは、ハローワークで提供されている3つの制度を利用して実務者研修を受講する流れや手順、制度内容についてわかりやすく解説していきます。
1.ハローワークで介護職員実務者研修を受講する利点と注意点
ハローワークを利用して実務者研修を受講する際の利点・注意点は以下の通りです。
特徴 | ハローワークは、失業した方のための就業支援センターとして無料職業紹介を行っている公的機関で、再就職支援のために各種職業訓練が行われています。 |
利点 |
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注意点 |
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2.実務者研修を取得する場合、民間スクールとハローワークどちらが有利?
実務者研修を取得するには、民間スクールかハローワークが提供している講座を受講する必要がありますが、それぞれに適したオススメできる方の条件があるので、次に紹介したいと思います。
民間のスクール | |
受講に適した方 |
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スク|ルの特徴 |
民間スクールは、通信講座も受講可能でスクーリング以外の授業は自宅学習が可能です。 一方、ハローワークは、全ての研修科目を通学で受講する必要があるので、自分の都合やペースで勉強することはほぼ不可能です。 また、民間スクールは、スクーリングの受講日程も自分で選択できますが、ハローワークでは指定された日程に合わせる必要があり自分で選択できません。 民間スクールは、受講生の様々な生活スタイルを考慮し受講しやすいように数種類の学習コースを設けているので、自分に適した講座・スクールを選択できます。 なので、仕事をしながら資格取得を目指したい方に適しています。 一方、ハローワークは、介護職に就くことを目的にした「職業訓練」として実務者研修が行われるので、介護職として勤務している方は受講できません。 また、実務者研修の講座は全て平日に連続して実施されるので、仕事をしながら通学し受講するのには無理があります。 さらに、雇用保険で提供される「職業訓練」という観点から、将来「介護福祉士」を目指すという受講動機が問われるので、学び続けるという確固たる意思が求められます。 一方、民間スクールは自費で受講するため、次のような様々な動機で自由に受講でき動機は問われません。
このような理由で資格を取りたい場合は、ハローワークだけでなく実務者研修を無料受講できる民間スクールもあるので利用すべきです。 実務者研修を無料受講する方法については、当サイトの、『介護職員実務者研修を無料・格安で受講する方法を徹底比較!』を一読して下さい。 |
ハローワークのスクール | |
受講に適した方 |
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スク|ルの特徴 |
ハローワークでは「職業訓練」という介護職としての就業目的で実務者研修が行われます。 よって、失業者や介護の未経験者・無資格者などが受講対象になり、介護業界で就業中の方は対象外となります。 一定期間、雇用保険の被保険者であった方は、「雇用保険」から失業手当を受給しつつ実務者研修を無料受講することが可能です。 雇用保険の被保険者ではなかった方でも、収入が少ない方は「職業訓練受講給付金」から次の2つの手当を受けつつ実務者研修を無料受講することが可能です。
また、ハローワークでは実務者研修の全研修科目をスクールや教室など受講会場まで通学して授業を受ける受講形式になります。 なので、通信講座と大きく異なる点は、同じ目標を持った仲間と、教え合ったり助け合ったり励まし合ったりしながら学ぶことができるので、比較的モチベーションを維持し続けることが容易です。 但し、スクーリングはハローワークから指定されたスケジュールに従って受講することになるため、自分の都合を優先して日程を選ぶことはできません。 |
3.実務者研修を無料受講できるハローワークの3種類の制度内容について
冒頭でも紹介しましたが、ハローワークでは、主に次の3種類の就業支援制度が提供されています。
- 公共職業訓練
(雇用保険を受給できる離職者向けの職業訓練) - 求職者支援制度
(雇用保険を受給できない求職者向けの職業訓練) - 介護労働講習
(雇用保険を受給できる介護求職者向けの職業訓練。介護労働安定センター主催の介護に特化した職業訓練)
これらの制度を利用すれば、いづれも実務者研修を無料受講できますが、適用対象者や制度内容が異なっているので、次に各制度についてわかりやすく解説していきます。
3-1.公共職業訓練(離職者訓練)の特徴と制度内容
制度内容
雇用保険(失業保険)を受給しながら求職活動をしている方が対象で、職業能力や技術力の向上、就業するための技能や知識を習得できる公的制度です。
対象者
離職中で雇用保険(失業保険)を受給している求職者が対象になります。
制度メリット
1.実務者研修を無料受講できる
失業手当をもらいながら、様々な職業訓練を受講することが可能です。
2.失業手当の待機期間がなくなり早く失業手当がもらえる
失業手当の給付は、次のような待機期間が設けられており手続き後すぐに失業手当が支給されるわけではありません。
倒産や解雇など会社都合で離職した場合は、手続き後7日間は受給できません。
自己都合で離職した場合は、手続き後7日間にプラスして、過去5年の期間中に自己都合退職が2回までは2ヶ月間、3回以降は3ヶ月間の給付制限期間が適用され失業手当は受給できません。
一方、公共職業訓練の受講者は、給付制限期間が免除されるため、自己都合による退職であっても失業手当をもらうことができます。
3.定められた受給期間が過ぎても失業手当がもらえる
失業保険の受給可能期間は、加入期間や年齢を基準にして、90日・120日・150日・240日と規定されています。 一方、職業訓練の受講者は、定められた期間を延長して給付を継続して受けることができます。4.失業認定日の手続きが省略できる
失業手当をもらうには、原則として月に1回は失業認定日にハローワークに出向き手続きが必要になります。
しかし、職業訓練を受講している期間は、失業認定日の手続き、就職活動を行っていることの実績報告は不要となります。
5.受講手当や交通費を受給できる
公共職業訓練受講時は、次の技能習得手当が支給されます。
- 受講手当:
基本手当の支給対象日のうち、公共職業訓練の受講日が支給対象になり、1日当たり500円で上限は2,0000円までを受給できます。 - 通所手当
公共職業訓練施設までの交通費が支給され、上限は42,500円まで受給できます。
6.積極的に就職サポートが行われる
公共職業訓練の受講修了者は、訓練で習得したスキルを活用できる就業先を優先して紹介してもらえる場合もあります。
職業訓練期間中でも就職相談することも可能です。
3-2.求職者支援制度の特徴と制度内容
制度内容
雇用保険(失業保険)を受給できない方が、職業訓練を受けることにより技能を向上させ速やかに就業できるようにする国の公的支援制度です。
また、職業訓練受講給付金の支給条件を満たせば、毎月10万円の生活支援給付金をもらいながら、職業訓練を無料受講できます。
対象者
求職者支援制度の対象者を特定求職者といい、次の要件を全てクリアする必要があります。
- ハローワークで求職申請を行っていること
- 雇用保険の被保険者・受給資格者ではないこと
- 就職し働く意思と能力を有すること
- ハローワークが職業訓練支援を提供するべきだと認めたこと
特定求職者に該当する事例は次の通りです。
- 雇用保険に加入することができなかった
- 雇用保険の受給期間内に再就職できず給付終了した
- 雇用保険の加入期間が不足しており給付してもらえない
- 個人事業主・自営業を廃業した
- 学校を卒業後も就業先が見つからない
次のような方は、原則として特定求職者に該当しません。
- 週の所定労働時間が20時間以上になる在職中の方
- 短時間又は短期の就労だけを要望する方
- 老齢年金を受給している方
制度メリット
- 雇用保険を受給できない離職者、収入が一定額より低い在職者であれば、職業訓練受講給付金として、月10万円の生活支援給付をもらいながら就業・スキルアップを図るための訓練を受講できます。
- 職業訓練受講給付金の支給対象とならない方でも、職業訓練を無料受講できます。但し、教材費は自己負担となります。
- 職業訓練のスタート時から終了後までハローワークが求職活動を支援してくれます。
職業訓練受講給付金について
職業支援が必要とハローワークが認めた特定求職者が、公共職業訓練・求職者支援訓練を受講し、職業訓練受講給付金の支給要件を満たした方は、次の3つの手当が支給されます。
●支給額
- 職業訓練受講手当 :月額10万円
- 通所手当 :職業訓練受講場所までの交通費(月額上限42,500円)
- 寄宿手当 :月額10,700円
職業訓練受講給付金は、訓練開始日から1ヶ月ごとに区切った個々の期間(支給単位期間)に支給されます。
支給単位期間の終了ごとに、ハローワーク指定日に来所し職業訓練受講給付金の支給申請と職業相談が行われます。
通所手当は、費用が安く合理的と考えられる通所の経路・手段で算出した金額が支払われます。
寄宿手当は、職業訓練を受講するために家族などと別居し宿泊する必要性をハローワークが承諾した方が支給対象となります。
●支給要件
支給要件は、以下の全てを満たした方が対象になります。
- 本人収入が月8万円以下
- 世帯の全収入が月25万円以下
- 世帯の全金融資産が300万円以下
- 居住地以外に不動産(土地・建物)の所有はない
- 訓練受講日は全て出席している(病気などやむを得ない場合でも支給単位期間ごとの出席率80%以上ある)
- 同世帯家族で職業訓練受講給付金の受給者はいない
- 過去3年以内に給付金支給の不正行為をしたことはない
- 特定求職者であったが、その後、雇用保険の被保険者や受給者にはなっていない
3-3.介護労働講習の特徴と制度内容
制度内容
介護労働講習は、介護職種に絞った職業訓練になります。
受講者の受付窓口はハローワークが担当し、講座運営と研修実施は介護労働安定センターが担っています。
実務者研修は全450時間の受講が義務付けられていますが、介護労働講習では、介護現場での実習・実技演習・就職サポートもプラスして行っています。
研修は通学で105日間授業が行われますが、講座を修了するには受講者は原則1日も欠席することはできません。
研修は無料で受講可能ですが、教材や健康診断(実習関連)に関する費用は自己負担となっています。
対象者
雇用保険の受給資格(被保険者)があり、介護業界への就業を希望する方で、かつ公共職業安定所長の受講要請に応じれる方が対象になります。
制度メリット
- 研修だけでなく介護現場の見学や実習が行われるので、職場や仕事をイメージでき自分にマッチした就職に繋がりやすいです。
- 現場実習を通して介護業務の実態を理解でき、実習先の施設に就職した方もいます。
- 介護労働講習の修了者の就職率が90%以上と毎年高い傾向にあります。
- 受講中もカリキュラムとして就職支援が組み込まれていて、長年の研修実績に基づき希望の介護職場への就業支援も行われます。
4.実務者研修をハローワークで受講する手順
次に、実務者研修をハローワークで受講する場合の手順についてわかりやすく説明していきます。
4-1.公共職業訓練や求職者支援制度をハローワークで利用する手順
- 求職申込(求職登録)を近隣のハローワークで行う。
- 求職登録受理後、「ハローワークカード」が発行される。
- 就業意識が高いことを示す為に職業訓練や求職者支援制度の説明会に出席する。
- ハローワークで職業相談を受け実務者研修を受講したい意思を担当者に伝える。
- 「受講申込書」などの必要書類が配布される。(再就職に向けて訓練が必要とハローワークが決定した場合のみ)
- 受講申請書を作成しハローワークに受講申請を行う。
- ハローワークで受理された「受講申込書」を職業訓練校に提出する。
- 職業訓練校の選考試験(面接・筆記試験)を受ける。
- 職業訓練校から自宅へ合否の選考結果が送付通知される。
- 合格であればハローワークへ「選考結果通知書」を持参する。
- 職業訓練の受講計画表である「就職支援計画書」の交付を受ける。
- 訓練受講開始となるので、初日には「就職支援計画書」のコピーを持参する。
4-2.介護労働講習をハローワークで利用する手順
- 近隣のハローワークで、自分が介護労働講習の受講対象者かどうかを確認する。
- 介護労働講習の説明会が開催されているので日程を選び参加予約を行う。
- 「受講申請書」をハローワークに提出し、「応募票」を受け取る。
- 「応募票」を確認し必要事項を記入する。
- 選考試験日時の予約を行う。
- 選考試験(作文と面接)を受ける。
- 受講可否の選考結果が郵送通知される。
- 受講決定の通知があれば内容を確認する。
- 確認後、管轄の介護労働安定センターへ連絡する。
- 受講開始となるが、持参物を開講日に忘れないようにする。(教材費、講習保険料は開講日に支払う)
5.ハローワークの選考試験に合格するための5つのポイント
上記で解説したハローワークの制度を利用し、実務者研修を無料受講するには、選考試験に合格しないと学ぶことはできません。
試験内容は面接と作文が主となっていますが、試験に合格するためには、以下の5つのポイントについてチェックし事前準備しておくことが大切です。
- 5-1.面接官に悪い印象を与えないこと
- 5-2.身支度や服装に注意すること
- 5-3.前の仕事の退職理由と、なぜ介護の仕事をしたいのかについて整理しておく
- 5-4.どのような介護士を目指すのか考えておく
- 5-5.介護職として就業後、自分の将来像を明確にしておく
5-1.面接官に悪い印象を与えないこと
ハローワークでは、試験結果だけが合否判定の基準となっているわけではないのです。
現実にはハローワークで相談に応じる担当者も、合否判定の一部分に関わっているというのが本音です。
どういうことかと言うと、相談者の応対姿勢や表情、話し方なども観察しながら確認しています。
人柄、スキルアップの重要性、就業への強い意思などに関しても感じ取った結果を、訓練校へ伝達しているようです。
なので、ハローワーク担当者の印象が良くない場合、訓練校に申告した内容で不利な状況になることもあり得ます。
相談対応の担当者なので直接訓練校と関係ないだろうと軽く見ず、ハローワーク内では真面目な態度と言葉使いで行動することが大切です。
5-2.身支度や服装に注意すること
求職エントリーをハローワークで申し込んだ後は、身なりや服の着こなしに普段から気を付けるようにしましょう。
率直で真摯な印象を醸し出しておくことが良い評価に結び付くので、見た目の印象はかなり大事です。
入職した以降は就業先のルールに基づいて働く必要があるので、キチっとした恰好や身なりをキレイにしていると「決め事をきちんと順守しくれるだろう」という信頼感を持ってもらえます。
具体例を挙げると、次の点が身なりのポイントになります。
- ラフな普段着や綺羅びやかな服装はしない
- 髪はカラー染めなどはしない
- 長髪を込み入った編み込みにしたり、整髪料を大量に使いガチガチにした髪型は避ける
- キラキラしたネックレスやピアスなどは身に着けない
- スーツで選考試験を受験する
好感や信頼感を面接官に抱かせることができる最重要ポイントは、きちっとした身だしなみと服装で臨むことです。
常々から、清潔感のある身なりと服装をきちっとしておくことを癖にして慣れておかなければなりません。
職業安定所に出向く時や選考試験を受ける時に拘ることなく、常日頃から習慣付けておくようにしましょう。
5-3.前の仕事の退職理由と、なぜ介護の仕事をしたいのかについて整理しておく
選考試験で必ずハローワーク側が重視して確認することは次の2つです。
「職業訓練を中途で退講しないだろうか?」
「職業訓練修了後、職場に定着するだろうか?」
なので、面接時には次に関して質問が行われます。
- 前の仕事を退職した理由について
- なぜ介護の仕事に就きたいのかについて
質問された時に、とんちんかんな返答をすると、面接官に不信感を抱かせることになります。
そんなことにならないよう前もってきちんと整理し考えておくべきです。
特に退職した理由を説明する場合、会社・職場の悪口や不平不満などの理由をあらかさまに言うことは慎むようにしましょう。
それよりも、もっと人の役に立つやりがいのある仕事に就きたかったなど、前向きな姿勢やヤル気などが面接官に伝わるようにしましょう。
なぜ介護の仕事に就きたいのか、いわゆる志望動機については、介護職に就きたいと決意した切っ掛けや体験などを具体的に説明します。
それから、人生・職場での経験や性格などから長所を挙げて、今後、介護職の仕事にどのように活かそうと考えているのかなどを伝えると良い印象を与えることができます。
5-4.どのような介護士を目指すのか考えておく
選考試験では、
「資格取得後、どのような介護士を目指すのか」
について質問されるケースも多くあります。
なぜなら、ハローワークの職業訓練は、
「会社や社会に役立つよう戦力となる人質の高い求職者を育成し就業してもらう」ことが目的だからです。
本気で介護職として就職したいと考えているなら、どのような介護士を目指したいのか自分なりの言葉で明確にしておくのがベストです。
かといって、難しい言葉を並べ立てる必要はなくシンプルで短い言葉で十分です。
「利用者の気持ちや立場に寄り添った介護をできる介護士を目指したい」
「常に笑顔とユーモアを忘れず高齢者から好かれる介護士を目指したい」
など、簡潔に表現できる言葉で自分の目標をイメージしておくことが大切です。
自分が本気でなりたい介護士のイメージ像を持っていれば、面接時に本気度や真剣さを面接官は感じ取ってくれるものです。
5-5.介護職として就業後、自分の将来像を明確にしておく
ハローワーク側としては、税金を投入し実務者研修の職業訓練をしたのに、「就職しても短期間で辞められる」ということが最も避けたい事案です。
当然、この点に関しても注視し確認してきます。
なので、
「さらなるキャリアアップや上位資格である介護福祉士を目指したい」
「ケアネジャーの仕事をしたいので、まずは3年間の実務経験を積み上げ介護福祉士の受験資格を得たい」
など、将来の目標にについても明確にしておけば、「中途挫折をせずに介護業界で長く働いてくれるのでは」という期待感を与えることに繋がります。
このように介護職として数年働いた後の将来の目標や、キャリアアップするためのステップを明確にしておくことが実際に介護職に就いた後もすごく重要な指針となります。