実務者研修の医療的ケアで実施される気管カニューレ内喀痰吸引の実技講習に関しての実施内容と手順や注意点について実技演習動画も含めて詳しく解説しています。
目 次
1.気管カニューレの種類・構造・機能、痰吸引で必要な物品と注意点
1-1.気管カニューレとは
1-3.気管カニューレの種類
1-4.気管カニューレ内吸引の注意点
1-5.喀痰吸引を行うために必要な主物品
1.気管カニューレの種類・構造・機能、痰吸引で必要な物品と注意点
気管カニューレとは何か、気管カニューレの構造・役割・4つの種類、気管カニューレ内喀痰吸引の注意点と必要な主物品について解説しています。
1-1.気管カニューレとは
自分の力では呼吸をしにくい方には、気管内挿管の処置を行う方法もありますが、次のような場合は、気管切開の処置がとられます。
- 病状により気道が狭くなっている場合
- 気管内挿管が2週間以上の長期に及ぶ場合
気管切開後は、喉に穴を開け、そこからカニューレ(チューブ)を気管内に入れ、気道を確保することで呼吸が楽になります。
また、気管内挿管とは、気管支から左右の肺に分岐する部分まで、□又は鼻から管を挿入し気道を確保する方法のことです。
1-2.気管カニューレの構造と役割について
気管カニューレの構造は次のようになっており、介護職は、気管カニューレの内部のみに限り、痰などを吸引することが可能です。
- カフ
咽頭、鼻腔内の分泌物が気管内に流入しないようブロックする役目があり、カフ上部に分泌物が溜まります。 - サイドチューブ
分泌物がカフ上部に溜まった場合、サイドチューブから吸引します。 - パイロットバルーン/サイドバルーン
パイロットバルーンからエアーを注入し、カフ内の圧を調整します。
1-3.気管カニューレの種類
吸引方法はどの種類もほぼ同じですが、吸引手順は多少の違いがあるので、しっかり確認してから行うことが大切です。
また、気管カニューレには、次のような種類があります。
1-4.気管カニューレ内吸引の注意点
通常人間が呼吸する場合は、鼻から吸い込んだ空気が咽頭、喉頭、気管、気管支、細気管支の順番で肺まで供給されます。
このとき、鼻腔や咽頭の粘膜で埃や菌が除外され、きれいな空気が肺に供給されますが、気管カニューレは無菌状態の気管内と直接繋がっているので、清潔を保つことを怠っていると肺炎や気管支炎などの感染症を発症させる危険性が高くなります。
吸引時の注意点として、次の2点が挙げられます。- 口腔・鼻腔からの吸引よりも、さらに清潔を保ちながら吸引することが重要になります。
- 吸引チューブで口腔・鼻腔の吸引を行った後、使用したチューブをそのまま気管カニューレ内吸引に流用することは厳禁です。
逆に気管カニューレ内吸引で使用した吸引チューブを口腔・鼻腔吸引で流用するのは問題ありません。
1-5.喀痰吸引を行うために必要な主物品
- 痰吸引器
- 吸引カテーテル
- 精製水や滅菌水
- 吸引カテーテル保存容器
(滅菌のため煮沸可能なものが必要ですが、使い捨て吸引カテーテルを使用する場合は容器は不要です。) - アルコール綿
- 使い捨て用手袋
- 速乾式擦式手指消毒剤
- 洗面器・うがい受け
- タオル
- ピンセット(セッシ)
- セッシ立て
- パルスオキシメーター
(血液中の酸素濃度(動脈血酸素飽和度)を計測できる医療機器で、酸素療法を実施している場合は必要になります。)
2.気管カニューレ内喀痰吸引の実施手順と注意点
医療的ケアの実技演習で受講する気管カニューレ内喀痰吸引の実施手順の解説と演習動画を紹介しますので参考にして下さい。
2-1.気管カニューレ内喀痰吸引前の準備作業と観察・確認事項
指示書に記載されている次の内容をしっかりと確認しておきます。
- 吸引圧
- 吸引時間
- 吸引の深さ
- 気管カニューレに関する留意点等
利用者に対し、次に挙げる項目を観察して異常が1つでもあれば、吸引を中止し医師や看護師に迅速に報告します。
- 顔色(表情)
- 痰がらみの音がないか
- 痰が溜まっている箇所
- 気管カニューレ周辺に出血が見られる
- 平常時より体温が高い、
- 平常時より極端に血圧が低い
- 下痢や腹痛がある
- 気分が悪く吐き気がある
- 気管カニューレ周囲や固定の状況を確認
- 人工呼吸の作動状況を確認
以下、ポイント3~6までの実施手順は、『1. 口腔内喀痰吸引前の準備作業と観察・確認事項』と同じですので内容を確認して下さい。
2-2.気管カニューレ内喀痰吸引の実施内容と手順
- 手袋の装着
- ①利き手で手袋を掴み非利き手に装着します。
- ②非利き手で手袋を掴み利き手に装着します。
(※利き手は何にも触れないように注意し不潔にしないこと。)
- チューブの準備
- ①非利き手で吸引器のチューブを持ちます。
- ②利き手で吸引カテーテル(チューブ)を取り出し、吸引器のチューブと接続します。
吸引カテーテル(チューブ)の先端は周囲の物と絶対に触れないよう注意が必要です。
- 消毒綿などで、吸引カテーテルの根元から先端まで拭き取ります。
- 利き手の指で吸引カテーテルの先端から10㎝程度の部分を摘み、非利き手親指でカテーテルの根元を押し曲げながら持ちます。
- カテーテルを持ったまま非利き手で吸引器の電源スイッチをONにします。
- 利き手で持ったカテーテルの先端部分を容器に入った滅菌水又は精製氷に漬け、非利き手親指を緩めて水を少量を吸引させながら医師から指示された吸引圧と合致しているかを確認します。
- 非利き手親指でカテーテルの根元を押し曲げ吸引圧がかからないようにし、容器に入れたカテーテル先端を引き上げます。
吸引チューブ内に水滴が残らないよう水をよく切って引き上げます。
- 利用者に吸引開始の声掛けをします。
- 人口呼吸器の接続をはずします。
- カテーテルの根元は非利き手の親指で押し曲げたままの状態で、利き手で持ったカテーテルの先端を気管カニューレに内にゆっくりと挿入します。
気管カニューレの長さ以上まで挿入しないよう深さを守ります。
チューブは鉛筆を握るときのような持ち方をするとスムーズに挿入できます。
図引用元:
気管内吸引シミュレーション
https://www.youtube.com/watch?v=DClfNYnmWgs より - 分泌物が溜まっている部分までカテーテルの先端が挿入できたら、非利き手の親指を放して吸引圧をかけ、1個所に圧がかからないよう注意しながら、利き手の親指と人差し指で鉛筆を持つようにチューブをゆっくり回しながら分泌物などの貯留物を吸引します。
この時、医師から指示された吸引時間と吸引挿入の深さは守りましょう。
- 吸引が終了したら静かに吸引チューブを抜きます。
- 人口呼吸器の接続を元に戻します。
- 消毒綿等で吸引チューブの外側を拭きとり、滅菌精製水を吸引してチューブの内側に通し汚れを落とします。
- 非利き手で電源をOFFにし、吸引カテーテル(チューブ)を吸引器のチューブから外し保管容器に戻す、又は破棄します。
- 手袋をしている場合は手袋をはずし廃棄します。
又はセッシを戻します。
- 利用者に吸引終了の声掛けをし、姿勢を整える
- 吸引後の観察
- 人工呼吸器が正常に作動しているか確認
- 吸引物の量・性状
- 顔色・呼吸の状態
- 全身状態
- 気管カニューレや固定状態 などの異常の有無
- 手洗いをする
- 実施後の報告
- 観察項目
- ヒヤリハット・アクシデント内容
- 使用物品の後片付け
- 吸引の状況を記録