介護保険制度がスタートして実に15年以上になり2020年の東京オリンピック時には20年の節目となりましたが、年々進んでいく高齢化と共に、介護を必要とする方が増加し続けているため、シニアーシルバー向けの市場は拡大の一途をたどってきました。
専門資格である介護資格の有資格者は、介護施設や事業所に限らず様々な分野で技量を発揮し、高齢化社会を支える礎となる人材と言えます。
ここでは、シニアーシルバービジネス全般に対する介護職としても視点と考え方について考察してみました。
シニアーシルバービジネスの拡大は介護職にとっては大きなチャンス
今後も少子高齢化の流れは向こう数十年間続いていくと予想されているため、シニアーシルバービジネスが縮小することはないように思います。
日本社会にとっては必ずしも望ましいこととは言えませんが、ホームヘルパーなど介護の仕事に従事する方にとっては、職域が大きく広がり活躍の場や機会が多くなります。
特に福祉や介護に関する様々なサービスには多くの人材が必要となり、現在も今後も求職側が有利な売り手市場となっています。
また、ホームヘルパーなどの介護職が従事する職場は、在宅や施設での介護現場がメインになりますが、視点を他に向けてみると、福祉や介護の専門知識や技術を持っている人材を欲している職場は、いろいろと存在しています。
これからの企業は、介護サービスそのものを提供するだけでなく、商品にしろ、サービスにしろ、介護に関する課題を解決したり、高齢者に役立つことに間接的にでも貢献できることは何かという視点で、商品開発やサービス提供を行うことは業績を伸ばす上で重要な経営ファクターとなっていくでしょう。
このような視点は、介護職に従事している方も同じで、いろいろな情報を知っておくことで、介護の実務にも大いに役立てることに繋がっていきます。
介護職はユニバーサルデザインという考え方を理解すること
以前はバリアーフリーという考え方が一般的でしたが、最近では、ユニバーサルデザインという概念が注目されるようになってきました。
バリアーフリーは、今あるバリアを取り除こうという考え方ですが、ユニバーサルデザインでは、商品にしろ製品にしろサービスにしろ、最初からバリアのないものを造ろうというコンセプトで開発し市場に提供していこうというものです。
これは、アメリカのノースカロライナ州の大学教授であったロンーメイス氏が発案した考え方で、福祉的な観点を大きく飛び越え現在社会におけるサービスや製品造りの基本原則ともなっています。
介護保険給付では、従来より福祉用具貸与、特定福祉用具の償還払いという制度があり、利用する人は多くなっています。
実際、移動手段である杖・歩行器・車椅子、住宅改修では階段や廊下の手すり、トイレや風呂での各種福祉用具、寝室でのベット、食事の補助具など、高齢者が生活を送る様々な場で活用されています。
手すりを設置するだけでも、自力で家の中を自由に移動でき、活動範囲が広くなり食卓テーブルや便所など自分で行くことが可能になるため、自立して生活を送れるようになります。
今まで他人の助けを借りてしか生活できなかった要介護者にとっては、生活で活用できる用具や補助具が果たす役割は重要で、大きな進歩です。
健常者でも視力が弱い人は、メガネが生活を送る上で重要な役割を果たす道具であり、要介護者でも足の機能が衰えている人にとっては、杖・歩行器・車いす・手すりは重要な道具になるのと同じ理屈です。
今後は、福祉用具という偏った観点ではなく、デザイン性、機能面、外観上から総合的な視点でユニバーサルデザインのあるべき姿を追い求めていくことがビジネスを伸ばしていく上で必要となります。
介護職員実務者研修やホームヘルパー1級資格保有者が持つべき視点
高齢者向けの市場が拡大し介護職が活躍できる職域も拡大していますが、このような状況の中で仕事をするということは、働く側、介護職自体の能力や技量も求められるということになります。
例えば、次のような分野でも高齢者向けのサービス提供が行われています。
- 高齢者でも加入できる保険サービスを提供する保険会社
- 家事代行やハウスクリーニングを訪問介護の追加サービスとして提供する事業所
- 要介護者宅を理美容資格と介護資格を持っている職員が巡回し理美容を行う事業所
このようにシルバー市場も大きく変化している中、介護資格を保有している方は、次のような視点を持つことがや大切です。
まずは、リーダー的な立場にある介護職員実務者研修やホームヘルパー1級資格保有者として、要介護者に役立つ価値ある情報をどれだけ収集し教えてあげることができるかということです。
高齢者への介護サービスの情報提供や提案はケアマネジャーがやるものだという認識の方も多いようですが、ケアマネジャーはあくまで介護保険給付のサービス対象範囲内の情報に限られます。
なので、それ以外に有効な情報があっても利用者に必要な情報が届かないことも少なくありません。
その点、介護職は利用者の生活に深く関わる職種のため、介護給付対象以外の情報でも利用者の自立につながり本当に役立つことがあれば、情報提供に努めようとする姿勢は大切です。
次に、自分の仕事に対する取り組み方を考える場合、介護職員実務者研修やホームヘルパー1級資格取得以降の介護福祉士も見据え、幅広く活躍するという観点で今後何が自分に必要かとことも考える必要があります。
現在社会における介護の仕事は、施設で働くか在宅訪問先で働くかといった狭い範疇に留まりません。
運搬業界では福祉タクシー、理美容業界では訪問理美容サービス、旅行業界では要介護者でも参加できるツアーなど介護スキルを求められる職場は多くあります。
介護スキルは様々な分野や業界に従事する人々にとっても、現在では必要不可欠なものとなっています。
このような観点から、特定の狭い範囲ではなく、介護職という仕事をもっと広い視点で捉え、自分自身の可能性を伸ばしていくことが重要になります。