医行為とは何か、介護福祉士などが医師の指示の基で行える医行為とは何か、社会福祉士及び介護福祉士法の改正内容について解説しています。
1.医療的ケアは医行為にあたるのか?
現在では、実務者研修では、医療的ケアとして喀痰吸引および経管栄養などの実技演習が行われていますが、法改正前は医行為として介護職員等が行うことは禁止されていました。
医行為とは、医学的な診療知識に基づく判断基準や医療技術を有している医師以外の者が行った場合、患者の身体に危険を及ぼす可能性があるとされる行為のことです。
よって、医師は医師法で、看護師などは保健師助産師看護師法で、医療資格を保有していない者が勝手に医行為を行うことは法律により禁止されていました。
なので、法改正前は介護福祉士や介護職員等は医療資格保有者でないので、喀痰吸引や経管栄養を実施することは医行為として法律上できませんでした。
1-1.社会福祉士及び介護福祉士法の改正内容について
その後、日本では少子高齢化が進み、現在では超高齢社会になっています。
このような時代背景から医師や看護師だけでは、喀痰吸引および経管栄養などの医療的ケアを必要としている多数の方々が全員安心できるような支援を行うことはマンパワー的に無理が生じてきました。
そこで、医療的ケアを介護福祉士及び介護職員等も担うべきだとする声がしだいに大きくなり、この問題を解決するために制度化され、社会福祉士及び介護福祉士法が改正され現在の医療的ケア研修として運用されているわけです。
但し、社会福祉士及び介護福祉士法が改正された現在も、喀痰吸引や経管栄養は医行為と見なされているので、法的に定められた教育及び条件を満足させた場合のみ実施できるような体制になっています。
よって、介護福祉士は、介護業務+一部の医療的業務を担い業務範囲広がったことになります。
医療全体から考えると医療提供できるマンパワーがアップすることに繋がり、医療サービスの提供という面からは充実して患者さんなどにも大きなメリットがあると言えます。
今後も介護福祉士として介護を担うのはもちろん、利用者が安心して医療的ケアを受けれるよう、技術の向上に努め自信を持って提供できるようにしていくことが必要になります。
1-2.介護福祉士等が医師の指示の基で行える医行為とは
介護福祉士等が医師の指示の基で行える医行為の範囲については次のように定められています。
社会福祉士及び介護福祉士法 第一章 総則 (定義) 第二条の二項で規定されているように、医師の指示に基づいて実施できる行為は、下記のような内容にになります。
喀痰吸引
- 口腔内喀痰吸引
- 鼻腔内喀痰吸引
- 気管カニューレ内部喀痰吸引
口腔内と鼻腔内喀痰吸引については、咽頭の手前までが許容限度になります。
経管栄養
- 経鼻経管栄養
- 胃ろう経管栄養
- 腸ろう経管栄養
経管栄養を実施する際は、次の状態について医師・看護師・准看護師・保健師・助産師の確認が必ず必要になります。
- 経鼻経管栄養…胃の中に栄養チューブが正常に挿入されている事。
- 胃ろうまたは腸ろう経管栄養…胃ろう・腸ろうの状態に異常がない事。
2.医療的ケアを実施するための法的要件
介護職員などが医療的ケアを実施するための法的要件について解説しています。
介護職員などが現場で医療的ケアを実施する場合、法的にも次のような内容について要件が規定されています。
- 医療的ケア従事者の資格的要件
- 医療的ケア提供事業者に関する要件
- 医療的ケアを行う場合の医師の指示に関する要件
2-1.医療的ケア従事者の資格的要件について
下記に示すような立場にある方が喀痰吸引等の業務を実際の介護現場で行う為には、次のような流れで研修受講、手続き申請、認定証交付などが行われる必要があります。
介護事業所や施設で働いている現役介護職員の場合
一定要件下で痰吸引を既に提供している方の場合
認定証の正式名は『認定特定行為業務従事者認定証』というもので、実施できる行為が記載され痰吸引を行うための証明になります。
上記の介護事業所や施設で働いている現役介護職員の場合、一定要件下で痰吸引を既に提供している方の場合は、2012年4月法制度の施行以降、「認定特定行為業務従事者」としての従事者認定が必要となっています。
介護福祉士を目指している方の場合
厚生労働省「介護職員等による喀痰吸引等についての制度(pdf)」
2-2.医療的ケア提供事業者に関する要件
医療的ケアを提供する介護職員が在籍する介護事業者などに対し、安全に実施するための基準、医療関係者とどう連携して実施するかなどの基準が定められています。
2-3.医療的ケアを行う場合の医師の指示に関する要件
介護職員が医療的ケアを行う場合、医師の指示事項を遵守することが絶対条件となるために基準が定められています。