実務者研修の医療的ケア 経鼻経管栄養と胃ろう・腸ろう経管栄養で使用される主な物品と栄養剤についての製品仕様と使用方法、経管栄養実施前の利用者への確認事項について詳しく解説しています。
目 次
1. 経管栄養を行うために必要な主物品
- イルリガートル(栄養ボトル)
- カテーテルチップ型シリンジ
- イルリガートルとカテーテルの連結チューブ
- ガートル台・イルリガートル棒(注入用栄養剤吊り下げ用スタンド)
- 栄養チューブ
- 栄養剤
- 使い捨て手袋
- 洗面器
- 微温湯
- 清浄綿
- はさみ
- タオル
- ティッシュペーパー
- 吸引器
- 体温計
- 血圧計 など
2. 経管栄養で使用する栄養剤の種類について
栄養剤には食品タイプと医薬品タイプがあり経管栄養で使用されます。
食品タイプの栄養剤(流動食)を使用する場合は、利用者の体調や便秘や下痢などに注意し、嚥下や消化器の状態を考慮して、無理なく注入摂取できるものを選ぶことが重要です。
医薬品タイプの栄養剤は、医師が注入する種類を判断し処方箋が必要になります。
栄養剤の種類と内容
タイプ | 種類 | 内容 | |
食品タイプ | 濃厚流動食 | 天然素材に含まれる水分量を減少させることで、1グラム当たりの含有エネルギー量をアップさせたもの。 | |
ミキサー食 | ミキサーなどで食物を細かく砕いたもの。 | ||
半固形化で使用 | 半固形化補助食品 | とろみなどで流動食の粘度を高め硬度を保持するもの。 | |
増粘剤 | 食品の粘度を高めたり、分離を防ぐために使用され、増粘安定剤とも呼ぶ。 | ||
寒天 | 海藻の一種である天草から抽出した粘質物を凍結し乾燥させたもの。 | ||
医療品タイプ | 半消化態栄養剤 | タンパク質や含有エネルギーが高濃度になるよう天然素材から加工された栄養剤。 | |
消化態栄養剤 * 半消化態栄養剤と比べて消化吸収率やエネルギーが高く、アミノ酸の含有量も多い。 |
成分栄養剤 | 上部の消化管で簡単に成分を吸収することができる栄養剤で、消化の必要がなく人体が必要とする多くの成分を含んでいるもの。 |
3. 経管栄養に適した栄養剤の使用条件について
栄養剤を経管栄養で使用する場合、次のような条件に該当していることが重要です。
- 消化吸収率が高い
- 副作用がない
- 高カロリーを少量で得られる
- 栄養バランスが良い
- 注入時チューブ内に栄養剤が詰まらない
- 調整が容易である
4. 栄養剤(半固形)使用時の注意点について
胃ろうや腸ろうの状態にある利用者に対しては、半固形タイプの栄養剤を使用しますが、経鼻経管栄養には適していません。
また半固形化した栄養剤は、次のような利用者に対して使用します。- 栄養剤が逆流しやすい。
- 腸の蠕動を改善する。
- 座位時間を短縮したい。
栄養剤(半固形)使用時の注意点は次の通りです。
- 市販されている半固形化補助食品、増粘剤、寒天などを栄養剤に使用します。
- 利用者の上半身は40度前後起こした状態で栄養剤を注入します。
- 医師が指示した注入速度を守ります。
- 半固形化補助食品やカテーテルチップシリンジの栄養剤を注入する時は、流動食と違い半固形化の状態なので容器を押す時に圧力がかかります。
そのことにより、容器に繋いでいる栄養ューブがはずれ栄養剤が漏れる危険性があるので注意が必要です。
- 栄養剤の注入時、利用者が次のような状態にある場合は、業務を一旦中断して医師や看護師に報告します。
- 咳き込む、又はむせる。
- 腸の蠕動が亢進し通常とは異なる状態にある。
- 利用者本人からの異常の訴えがある。
- 注入が終了した時点で5~10mlくらいの白湯をカテーテルチップシリンジで注入して洗い流し、胃ろうのチューブやボタンに栄養剤が詰まるのを防止します。
5. 経管栄養を行う前の確認事項
経管栄養を行う前に次の項目をチェクし、該当するものがあれば栄養剤の注入を中止し医師や看護師に報告し指示を仰ぎましょう。
自分勝手に判断してはいけません。
- チューブの割れ・ヒビ・キズがあったり、抜けかけたりしている
- 孔からの出血などが見受けられる
- 利用者の体温が正常値より高い
- 下痢・腹痛・吐き気などの症状がみられる
- 血便・吐血などがみられる
- 顔色や気分が悪い
- 血圧が正常値よりかなり低くなっている