介護予防の推進・認知症予防の推進・地域ケア体制の整備などの介護保険制度の重要課題と今後の動向、訪問介護系サービスビジネスの現状と今後の動向などを考慮し、将来性に合致したホームヘルパーの役割について考察してみました。
介護保険制度の重要課題と今後の動向
介護保険制度は2006年度に、介護予防と認知症ケアの推進、地域ケア体制の整備という点に重点が置かれて大幅に改正された後に現在に至っていますが、この点については今後も継続していくものと予想されます。
その理由としては、2015年に大勢の団塊の世代が65歳以上の前期高齢期に入り、2016年度では3460万人で全人口数の27.3%が65歳以上で、国民の4人に1人以上が高齢者という超高齢社会に日本は突入しました。
日本全人口に占める高齢者の割合は先進主要国で最も高い数値になっており、さらに2025年になると高齢者数は3,657万人(30.3%)、2055年には3,626万人(39.4%)という超々高齢社会へと変貌することが厚生労働省では試算されています。
介護保険の給付費は今後も大幅に増大し続けるものと予測されるため、財政が破綻すれば介護保険制度の維持はできず、危機的な社会問題に発展することになります。
なので、財源徴収や保険給付の方法や仕組みそのものを大きく改革し、制度を持続運営できるような施策を講じ大胆な制度転換を行う必要性に迫られると予想されます。
次の点が2006年当時の制度改革の基本理念で、目標実現を目指して改革案が出されていましたが、現在も大きく変わることはありません。
- 介護保険制度の財源確保と持続運営
- 健康で活動的な超高齢者社会の構築
- 総合的な社会保障制度の仕組み造り
では次に具体的な施策について考察していきましょう。
介護予防の推進
今後の介護のあるべき姿を考察すると、対処法となっている要介護者の介護を行うだけでなく、事前予防となる介護予防にも重点を置く必要があります。
介護が必要になってから介護を行っていては、増え続ける高齢者の増加率に対応できなくなるのは明白です。
介護保険制度の継続的運用を確保するためには、高齢者数の増大を見据えて要介護状態になる前に手を打つ必要があります。
まず、現在、要支援1、要支援2、要介護1の状態に留まっている高齢者に対し、状態改善や悪化防止が期待できるような介護予防支援ができるかどうかが大きなポイントになります。
さらに、健康な内から将来、要支援や介護状態にならないよう、介護に関する啓蒙活動や健康増進策を講じたり、各個人の心身状況を把握し、比較的軽度な状態にある高齢者の身体機能を維持したり改善できるような介護予防サービスを総合的に提供できる仕組みを確立することが重要です。
認知症予防の推進
現在の認知症ケアサービスは、地域密着型サービスの小規模・多機能型や、早期診断・対応を行なう継続的な地域支援体制が各自治体で整備され、身体ケアだけでなく認知症ケアの支援体制やサービスも充実してきました。
しかしながら、今後も認知症高齢者はますます増大すると予想されているため、健康な状態にある高齢者に対しても、事前に認知症に関する啓蒙活動や認知症予防に繋がる効果的な予防法を実施できるような支援体制を全国的に整えるべきです。
地域ケア体制の整備
日本では少子高齢化の急速な進展に伴い核家族化が進み、独居高齢者や夫婦のみ高齢者世帯が増加しています。
要介護状態になった場合でも長年住み慣れた地域・地元・自宅で持続して日常生活を送れるよう、夜間や緊急時の対応を含めた地域密着型の包括的・継続的なケア体制をさらに充実していく必要があります。
総括
今後向かうべき介護支援のあり方としては、介護が必要な状態になってからどうケアしていくかではなく、介護が必要な状態になる以前に介護予防できる仕組み造りが必要です。
なので、各地域を支える市町村が主体となって、介護予防の効果を期待できる地域に密着したサービスをいかに提供できる体制や仕組みを構築できるかがポイントになりますが、まず政府が全国的に介護予防を推進できるような支援策を打ち出す必要があります。
現状の対処法レベルの施策では根本的な解決には至らず、制度を持続していくには相当無理がありますので、今後も介護保険の改正内容や政策については注視していくことも重要です。
訪問介護系サービスビジネスの現状と今後の動向
介護サービスは中小事業者と大手事業者に大きく分かれますが、中小零細介護事業者の場合は、サービス内容も部分的に特化しているところも多く、地域密着型の濃密な介護サービスを担い、地域内での情報網を活用して顧客獲得に結びつけています。
大手介護事業者は、全国に施設を設け資本力と人材規模をバックに幅広いサービス提供を目指した事業展開を行っています。
大手事業者は訪問介護だけでなく、訪問入浴、デイサービス、介護給付適用の介護施設から有料老人ホームまでシニア層に向けて総合的にサービス事業を展開しているところが多くあります。
大手事業者も中小事業者も必ずケアマネジャーが在籍し、サービス事業者との連絡・調整を行いサービス業務の割り振りを行っています。
医療が必要な要介護者については、医療制度改革や介護保険制度改革により、医療法人が中心となり訪問看護や訪問リハビリ事業が行われています。
利用者と密接に関わりを持っているホームヘルパーであるからこそ、医療施設や福祉施設に関係なく、現場の実状や利用者の要望を把握できる立場にあるため、最適なサービスの組みあわせを提案していくことが、今後の現場のホームヘルパーには求められるようになるかもしれません。
そのことにより、ケアマネジャーと連携して、利用者の実状や状態に最適なケアプラン策定や改善が可能になります。
訪問系サービスは、顧客である利用者やその家族に密接に関われるサービスとしては、ビジネスの進展という観点から見ると大きな可能性を秘めています。
介護保険給付の適用外としては、事業者が独自の家事支援サービス業を展開することも可能で、従来の家事援助だけでなく、花壇や庭の手入れ、ペットの世話、日曜大工、話し相手など、便利屋が行ってきたようなサービスも含めて総合的にサービス提供することもできます。
近年の独居高齢者や高齢夫婦オンリーの家庭が増加している社会的状況においては、必要とされる現実的なサービスとも合致します。
今後は、このようなビジネス感覚を備えたホームヘルパーが利用者宅を訪問し、ビジネス機会を機敏に察知できる能力が必要な時代になっていくと思います。